公営住宅への引っ越しを機に、多くの物を手放しました。
それでも、婚礼タンスだけは新しい家へ持っていくつもりでした。
引き出しの付いた整理タンスと、洋服を掛ける洋服タンス。両親が嫁入り道具として用意してくれた、2棹の大型家具です。
約30年間使い続け、私にとっては暮らしの一部になっていました。何より、懸命に働いていた両親から贈られた物です。処分するという考えは、引っ越し当日までありませんでした。
ところが搬入が始まってから、希望していた部屋へ、そのままでは入れられないことが分かります。
別の部屋へ置くか、それとも手放すか。
時間をかけて考える余裕もない中、私はその場で2棹とも手放すことを決めました。
約30年間使った、両親からの婚礼タンス
両親は自営業を営み、朝から夜遅くまで働いていました。
母は元看護師でしたが、自営業をしていた父と結婚してからは、仕事に加えて家事や子育ても担っていました。当時を振り返り、「父と結婚したばかりに、いばらの道を歩んだ」と笑っていた母の言葉を、今でも覚えています。
父にもほとんど休日はありませんでした。それでも、時間を見つけては私たちと遊ぼうとしてくれる人でした。
婚礼タンスは、そんな両親が働いて得たお金で用意してくれた物です。
決して安い物ではなかったでしょう。けれど、私が手放せなかった一番の理由は、値段ではありません。タンスを見ると、そこに込められた両親の思いまで感じていたからです。
整理タンスには畳んだ服を入れ、もう一方のタンスにはハンガーに掛けた洋服を収納していました。大量の服が入っていたため、手放したら収納場所がなくなるという現実的な不安もありました。
だから引っ越しが決まっても、処分するつもりはなかったのです。
引っ越し当日、希望していた部屋へ入らないと分かりました
2棹の婚礼タンスは、ほかの荷物と一緒に公営住宅へ運んでもらいました。
ところが搬入の段階になり、希望していた部屋へ、そのままでは入れられないことが分かりました。家の中へまったく搬入できなかったわけではありません。
引っ越し業者からは、別の和室へ置く方法を提案されました。
しかし、その部屋は4畳半しかありません。そこには、両親と幼い頃に亡くなった姉のお仏壇を置く予定でした。
お仏壇に加えて大型の婚礼タンスを2棹置けば、ただでさえ狭い部屋が、さらに使いにくくなります。
約30年間使ってきたタンスです。その場ですぐに「いりません」と言える物ではありませんでした。
それでも、置く予定のなかった部屋へ無理に運び入れ、タンスに合わせて新しい暮らしを始めることにも迷いがありました。
引っ越し作業は進んでいます。別の日に改めて考えることも、いったん保留にすることもできません。
私は迷った末、2棹ともその場で手放すことを決めました。
2棹を5,000円で引き取ってもらいました
引っ越し業者の方からは、中古の婚礼タンスは買い手が少なく、引き取り先を見つけるのが難しいと説明されました。
通常なら、2棹で20,000円かかるとのことでした。
しかし、搬入当日に手放すことになった事情を考慮していただき、2棹合わせて5,000円で引き取ってもらえることになりました。
タンスが5,000円で売れたのではありません。私が引っ越し業者へ5,000円を支払い、処分をお願いしました。
処分方法を比較し、納得できる業者を選んだわけでもありません。公営住宅へ運び込むつもりだったタンスを、引っ越し当日に手放すことになった結果です。
大型家具を手放すなら、引っ越し前に処分方法を確認しておく
私の場合は、引っ越し当日に婚礼タンスを手放すことになったため、処分方法や費用を事前に比較することができませんでした。
大型のタンスや家具を処分する方法には、自治体の粗大ごみ、引っ越し業者への相談、不用品回収業者への依頼などがあります。
どの方法が利用できるか、費用がいくらかかるかは、住んでいる地域や家具の大きさ、依頼する業者によって異なります。
特に、自分で運び出すことが難しい大型家具がある場合は、引っ越し当日になって慌てないよう、事前に処分方法と費用を確認しておくことをおすすめします。
私のように「新居へ持っていくつもりだったけれど、当日になって置けない」と分かることもあります。大型家具を持っている方は、引っ越し前に「新居へ入るか」「分解できるか」「手放す場合はどう処分するか」まで確認しておくと安心です。
大型家具を自分で運び出せない場合
婚礼タンスのような大きく重い家具は、自分だけで運び出すのが難しいことがあります。処分を急いでいる場合は、不用品回収業者へ見積もりを取り、料金や作業内容を確認する方法もあります。
後から、分解して運べたことを思い出しました
引っ越しが終わってから、以前の引っ越しでは、婚礼タンスを分解して搬入していたことを思い出しました。
当日は、そのことが頭から抜け落ちていたのです。
分解できると分かっていれば、私はタンスを新しい家へ持ってきたかったと思います。希望していた部屋にも搬入できたのではないか。手放さずに済んだのではないか。
そう考えても、すでに引き取ってもらった後です。
引っ越し当日に下した決断を、やり直すことはできませんでした。
タンスを失い、3日間服に埋もれました
婚礼タンスは手放しましたが、中に入っていた服は新しい家へ運ばれています。
収納するはずの家具だけがなくなったため、引っ越し後の3日間は、行き場のない服に埋もれるような状態でした。
それまでタンスの中に収まっていたときには、自分がどれほど多くの服を持っているのか、分かっていなかったのだと思います。
現在、服は6畳の和室にある押し入れへ収納しています。ただし、持っていた服をすべて移したわけではありません。
押し入れに収めるため、一着ずつ見直して服を減らしました。婚礼タンスを手放したことが、自分の持ち物と向き合うきっかけになったのです。
引っ越しを機に衣類や日用品を減らした経緯は、次の記事にまとめています。
当時は持ってきたかった。それでも今は後悔していません
分解して運べたことを引っ越し後に思い出したときは、持ってこられたのに手放してしまったと思いました。
当時の私に分解できると伝えられたなら、おそらく処分せずに運んでいたでしょう。
それでも現在は、手放したことを後悔していません。
タンスを置くよう提案された4畳半の和室は、今では作業部屋になっています。お仏壇はありますが、大型タンスを置かなかったため、落ち着いて作業できる場所として使えています。
服も量を減らし、6畳の和室にある押し入れへ収まるようになりました。
両親が用意してくれたタンスは、もう手元にはありません。しかし、母が話していた言葉や、忙しい中でも私たちと遊ぼうとしてくれた父の姿は、今も覚えています。
物がなくなっても、両親との記憶まで消えるわけではありませんでした。
約30年間使った婚礼タンスを、私は引っ越し当日に突然手放しました。分解できることを思い出したのは、その後です。
当時は持ってきたかった。
けれど、今の作業部屋と、押し入れに収まるだけの服で暮らしている現在を見れば、結果的には手放してよかったと思っています。


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