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退職後、「毎日どう過ごせばいいのか分からない」……そんな漠然とした不安を感じていました。 朝の過ごし方や、着る服、そして部屋の整え方を少しずつ自分に馴染ませていくうちに、ようやく自分が落ち着ける暮らしが見えてきました。 これは、10年働いた会社を辞めたあと、静かな和室を「自分の働く場所」にしていった、58歳の私の記録です。 |
退職後、朝の時間の流れが変わった
会社員だった頃、朝は「動かされていた」のだと思う。アラームが鳴り、顔を洗い、化粧をして、決まった電車に乗る。それが当たり前すぎて、自分で選んでいる感覚すらなかった。
退職してはじめての朝。アラームをかけ忘れたことに気づいたのは、もう8時を過ぎていた。慌てて起き上がりかけて、ふと止まった。……もう、急がなくていいんだった。
正直に言えば、最初の頃はこの「何もしない朝」が怖かった。世の中の人が通勤電車に揺られている時間に、私はパジャマでコーヒーを飲んでいる。適当なマグカップで、窓を開けて、鳥の声を聞きながら。それだけで一日が始まる。
社会から取り残されていくような、うしろめたさにも似た感覚が、しばらく続いた。でも、ある朝気づいた。この静けさは、怠惰じゃなくて、ちゃんと「私の時間」なんだ、と。
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「ちゃんとして見える服」を脱いで、自分を整える
在職中、毎朝やっていたことがある。「仕事モードの自分」を作り上げる、という作業だ。ストッキングを履き、ヒールを履き、それなりに見える服を着て、「外向きの顔」を貼り付ける。
退職してその必要がなくなったとき、最初に手放したのはストッキングだった。次にヒール。そして、締め付けのある服。
代わりに選んだのは、洗いざらしの柔らかい綿のシャツと、楽なパンツ。安いけれど、着るたびに「ほっ」とする服。外から見たら地味かもしれないけれど、自分をご機嫌にするための身支度、というものが少しずつ分かってきた。
外向きの自分を脱いでいくたびに、心が軽くなっていくのが分かった。着替えるたびに、少しだけ自分に戻っていくような感覚。
派手さはないけれど。和室を「自分の働く場所」に整えた
6畳の和室に、リサイクルショップで買った小さな木の机を置いた。1,500円だった。椅子は以前から使っていた折りたたみ式。窓にはすだれを下げた。
朝、箒でさっと床を掃いてから、パソコンを開く。その「掃いてから始める」という小さな儀式が、いつの間にか私のルーティンになっていた。
誰に頼まれたわけでもないのに、今日もパソコンを開いて、一行ずつ言葉を置いていく。会社でもない、上司もいない。締め切りもない。
けれど、この和室のデスクの前に座ると、「私は今日を生きている」という手応えがちゃんとある。それで十分だと、今は思っている。
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退職後の不安は、今もゼロではない
もちろん、今でもふとした瞬間に、将来の不安に襲われる夜はある。年金のこと、貯金のこと、体のこと。これで良かったのかと、立ち止まりそうになる日も、正直ある。
そんなとき、私がやることは決まっている。散歩に出かけるか、図書館へ行くか、ただお茶を一杯、ゆっくり飲むか。答えが出ないことを抱えたまま、それでも今日の時間を丁寧に使う。
不安を「解決する」より、不安と「一緒にいる」ことに慣れていく、という感覚に近いかもしれない。
急がなくていい、と気づいた日から
朝起きて窓を開けるたび、「今日もここから始めよう」と思えるようになった。それだけで、十分だと思っている。
急ぐことをやめて、誰かと比べることをやめて、「ちゃんとしなきゃ」を少し手放したら。ようやく私は、自分が落ち着いて呼吸できる場所を、この和室に作れた気がしている。
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この記事で伝えたかったこと 退職後の「何もしない朝」は、怠惰ではなく自分の時間。
服・部屋・習慣——「外向きの自分」を手放すことが、心の軽さにつながる。
不安と戦わず「一緒にいる」ことに慣れると、毎日が少し楽になる。 |
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